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若手芸術家支援企画2020「ピンボケの影像」|大八木夏生インタビュー

若手芸術家支援企画2020「ピンボケの影像」の開催を控え、出展作家の大八木夏生と勝木有香に自身の制作活動や展覧会に向けての抱負などを答えていただきました。
今回は大八木夏生のインタビューをお届けします。

Q.制作活動をはじめたきっかけはなんですか?

子どもの頃は絵を描くことが好きで、その時々でハマっているキャラクターのようなものをよく描いていました。親がデザインの専門学校に通っていたので家にたくさん画材があり、とくに制限されることなくいろいろな画材で遊んでいて、描き味にこだわる子どもでした。中高生になっても授業中ずっと落書きをして過ごしていました。
進路選択の際、美大に行くことにして。受験のために画塾に通っていましたが、決まった時間にそこに行くことが耐えられなくて、本当は週3日行かなきゃいけないところを、週1日でお願いしていました(笑)
大学に入るきっかけになるような美術で感動した経験や、真剣に勉強した経験は特になかったですが、絵を描くことを続けたい気持ちは強くありました。そこで絵が描けてかつ技術を身に付けることができそうな版画を専攻しました。「絶対に版画を勉強するんだ!」という純粋な気持ちだけで入ったわけではない版画になぜか居着いていて。今思えば、初めから版画だなということを嗅ぎ取っていたのかもしれません。
とにかくのめり込むタイプではないので、大学に入ってからも、木版画や銅版画、「描きたい」という気持ちから専攻していたリトグラフにも、ずっと人ごとのような距離感を持っていました。面白いとは思うけど、自分がやるとなったら違う。しっかり時間を置かなきゃいけない工程で、もどかしくて「ええか」と思って待てなかったり(笑)そんな中、技法的なアレンジが比較的可能であり、自分のやりたいことが自由に表現できる技法としてシルクスクリーンを最終的に選びました。
モチーフは、中高生のころに描いていたキャラクターから、ある設定された状況の中にいる人物を自分の中で作り出し制作していましたが、自分が伝えたいイメージとそのためのモチーフ、そして選択した技術の不一致を感じていました。制作を続けるうちに、制作方法やモチーフ自体も徐々に自由に表現するようになっていき今の形に落ち着きました。ただ「違和感を感じたもの、その瞬間をモチーフにする」ということだけは、ずっと共通しています。
幼いころ、画材を自由に制限なく使えていたことは、なんでも手段に取り入れる今の表現技法に繋がっていると思います。

Q.影響を受けた人はいますか?

デイヴィッド・ホックニー(David Hockney)はすごく好きです。ペインティングの人だけど、その方法も色々だし、版画や写真、コピー機で遊んだりもしていて。リチャード・タトル(Richard Tuttleも、オブジェを作ったり、版画をしたり。彫刻家で、レリーフを作っているシュテファン・バルケンホール(Stephan Balkenhol)も好きです。私は平面作品を作っていますが、平面の作品や作家に影響されているかと言われるとそういうわけではなく、一個の表現技法を突き詰めながら、いろんなことを楽しくやっているんだろうなという姿勢の作家には惹かれるし、影響を受けています。

Q.今回一緒に展示をする勝木さんの作品や勝木さん自身について、どう思いますか?

去年の個展で初めてシルクスクリーンモノタイプの作品だけを展示したのですが、すごく熱心に展示をみてくれている人いる!と思ったら勝木さんで。歳も少し下だし、「まさか一緒に展示をできるとは」と思いました。
作品は、たくさん描いて、研究している人の線だなと思いました。さっきあげたホックニーやバルケンホールもそうですけど、線が面白かったりしてよく注目してみているので、太さや勢いなどいろいろ注目するところがあり、関心深いです。

Q.展覧会の抱負

勝木さんの作品は同じ技法ですが、共通点もありながら、見た目などの異なる点もあるので、展示を見た人が様々な想像を膨らませることができるような、余白のある展示になれば面白いなと思っています。
新開地には、作品のモチーフになる、枯れた観葉植物みたいなものがあったり、変なものが落ちていたりして(笑)楽しく散歩しながらリサーチしています。

Q.これからどのように作家活動を続けていきたいですか?

場所へのこだわりはなく全然どこでも行けるし、作品の技法もシルクスクリーンだけじゃないので、作品の発展や制作を続ける方法はいくらでもあると思っています。今までも作品を制作していく中で、考え方に変化がある度にその都度作品は少しずつ展開していったので、とにかく続けるしかない。これからも少し前のことを振り返って気づいたことを次の展示に生かしていく制作スタイルでやっていくんだろうなと思います。一度海外に行きたいとは思っています。制作のためだけじゃなく、いろいろなものを広く吸収したほうが良いと考えています。これからもいろいろな手段で、スポンジのようになんでも吸収していきたいです。

(2020年9月16日収録)

勝木有香のインタビューはこちら

《展覧会情報》
若手芸術家支援企画2020「ピンボケの影像」
出展作家|大八木夏生、勝木有香
会期|2020年11月5日(木)-11月19日(木)12:00-19:00 火曜日休館
会場|神戸アートビレッジセンター(1F・KAVCギャラリー、コミュニティスペース1room)
料金|入場無料

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