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レポート美術ART LEAP 2019

ART LEAP 2019|神戸滞在レポート 後編

神戸アートビレッジセンター(以下、KAVC)では、2018年より30代から40代の芸術家を対象とした公募プログラム「ART LEAP」を実施しています。
「ART LEAP」は、新たな表現の創造と意欲的な挑戦の舞台とし、経験を積んだ作家にとってステップアップの機会とすることを目指しています。そして「ART LEAP」は、作家とKAVCスタッフが密に連携しながら展覧会を創り上げていくことを特徴です。ここでは、2020年2月の展覧会までの制作過程をレポートで記録していきます。
※ ART LEAP 2019 関連レポートの一覧はこちらから。

 

滞在4日目|

4日目には、外国にルーツを持つ子どもたちを対象に日本語教室を開いている先生にお話を伺いました。

実際の授業風景も見学させていただきました。ただ日本語を教えるだけでなく、子どもたちの置かれている状況を把握しながら、一人一人に合わせた話し方で指導をされていたことが印象的でした。また、子どもが日本語を学ぶ際、まずは母国語をしっかり話せるようにならないといけないとおっしゃっていたことが印象的でした。

その後、海外移住と文化の交流センターへ。
この施設は、かつて神戸移住センター(旧:国立移民収容所)として、日本からブラジルへ移住する人々の渡航前の準備や研修をする場として1928年に開設されました。現在は、海外移住と文化の交流センターに名前を変え、海外移住の歴史とその意義を後世に伝えるとともに、多文化共生の取り組みの拠点施設として再整備されています。

この日は、日伯協会事務局長の窪田さんに、建物内の移民ミュージアムを案内していただきました。
「移民」というと、今の日本は外国人を受け入れる側としての立場の方が多いかもしれませんが、約100年前には、日本から多くの人々がブラジルへ移民として渡っていました。
ミュージアムでは、当時使われていた道具や写真が展示されており、移民を送り出す側、これから異国へ旅立つ側の人々のことを様々な資料で知ることができました。

滞在5日目|

この日は、ブラジルに移民した経験のある長谷川さんにお話を伺いました。

長谷川さんは、6歳のときにご両親とともにブラジルへ渡り、現在は日本で生活されています。
移住した当時の状況や現地でのお仕事のこと、また日本に帰ってきてからのご苦労など、たくさんのお話を伺うことができました。
見せていただいた資料の中には、4日目に訪れた海外移住と文化の交流センターが国立移民収容所だったころの写真もありました。

滞在6日目|

リサーチ最終日は、2日目に訪れた長田方面へもう一度向かいました。
1か所目は、神戸映画資料館です。ここでは、「海外居住組合の居住地実況」(1934年頃制作)というブラジル移住者たちの生活の様子がわかる貴重な映像資料をみせていただきました。映像では、移住先での労働の場面も映っていて、昨日長谷川さんから伺ったお話がより一層深まりました。

2か所目は、靴の製造を行う株式会社ベルの工場見学に伺いました。
長田はケミカルシューズ(合成皮革製の靴)発祥の地です。ケミカルシューズは長田の街、またそこに住む外国人の方々と深いつながりがあります。
工場では、ケミカルシューズの製作工程を細かくご説明いただきながら、実際の製造現場を見せていただきました。

潘さんが作品制作をするにあたって注目していた要素の一つが、「労働する身体」です。ブラジルに移住した日本人の働く姿と、外国人が多く住むこの街で働く人々の姿をみることができ、作品のアイディアに直接つながりそうなリサーチとなりました。

最後に、たかとりコミュニティセンター内にあり、多言語でのラジオ放送を行うFMわぃわぃの金千秋(キム チアキ)さんにお話を伺いました。

FMわぃわぃは、阪神淡路大震災の際に、多言語で災害情報を放送したことをきっかけにはじまったラジオ放送局です。日本にいる外国人との交流をテーマに多言語での放送を行っています。
金さんのお話には、これまでに私たちが取材した様々な場所のことも登場し、今回のリサーチ活動が一つにつながったように感じました。そして、FMわぃわぃができた歴史は、神戸がたどってきた移民の歴史でもあるように感じました。
たかとりコミュニテイーセンターには「紙の教会」で知られるカトリックたかとり教会もあります。金さんは新聖堂の中にも案内してくださいました。

この一週間、毎日違う場所を移動しながら、いろいろな人にお会いするハードスケジュールでしたが、潘さんは取材先でのお話や人の印象を、スポンジのようにもれなく吸収しているように感じました。
訪れた場所の帰り道に、それぞれがどう感じたかを話したり、そこから作品に落とし込めそうなアイディアを話したりと、考えていることを細かく共有できたことは一週間神戸に滞在していたからこそだったと思います。
5月の公開プレゼンテーション当初の作品のプランとは、形が変わることになりそうですが、リサーチ内容を踏まえた作品・展示プランのイメージがより明確なものになってきました。

今回のリサーチでは、どの現場でも内容の濃いお話をお聞きすることができました。ご協力いただいた皆様、本当にありがとうございました!
次回は、今回の滞在を踏まえ、作品・展示プランのミーティングを行う予定です。
引き続きミーティングの様子や進捗をレポートしていきます。お楽しみに!

(美術アシスタント N)

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