オパンポン創造社「オパンポン★ナイト〜ほほえむうれひ〜」
アフタートークレポート

アフタートーク登壇者

戌井昭人(鉄割アルバトロスケット主宰)

野村有志(オパンポン創造社主宰)

若旦那家康(コトリ会議/ROPEMAN(42))

若旦那家康: 若旦那家康と申します。ウォーリーさんとはKAVC PLAY RADIOというトーク番組で一緒にパーソナリティをさせて頂いております。今回はウォーリーさんではありませんがどうぞよろしくお願いいたします。それでは、今回のアフタートークゲストをお呼びいたします。東京から鉄割アルバトロスケットの戌井昭人さん、オパンポン創造社の野村有志さんです。

野村有志: 思っていた以上に残っていただき、ありがとうございます。

若旦那家康: 戌井さん、オパンポン創造社は初めてですよね?こういう新しい出会いをブッキングしている訳なんですけど。まずは初めてなので何をしゃべったらいいものやらというところもあると思うので、ウォーリーさんは今回、ゲネの映像を見てのメッセージを頂いておりますので代読させていただきます。

ウォーリー木下: ゲネ映像を見せてもらいました。

開始早々、マスクなしにつばを飛ばしあい会話をする二人に、こういう風景が現実から消えてしまったことを思い出し感慨深いものがありました。

それはさておき、作家としての野村くん・演出家としての野村くん・俳優としての野村くん、がバランスよく存在しているなあと思いました。 野村ショウになっているわけでもなく、かといって存在が全く消えているわけでもなく。

戌井さんは鉄割のパフォーマンスのとき、そういう役割みたいなものはどのように自分の中で作っていますか?
謙遜することを前提に聞きますが、なんでもできる人は、なんでもできる故に、逆説的になんでもしないようにするのかなと。
集団での作業と、真夜中の一人の作業は演劇を作る上でどういう仕組みになっていますか?

物語は、どうでもいいこととどうでもよくないこと、大事なことと大事じゃないこと、意味と無意味、
それらの境界線の曖昧さ、境界線の引き方、もっといえばそういう括り自体への問いかけがあったように思えます。
それはある意味現代的なテーマな気がしますし、同時に昔から戌井さんの作品にも感じる雰囲気だと思いました。
この物語の中から感じ取ったお互いの興味がどのあたりにあるのか教えてください。

本日は劇場にお伺いできずすいません。

純粋に戌井さんの感想を聞きたいのでまずそのあたりから始めてもらえれば。
舞台上で裸になる人も随分と減ってきた今日この頃、その文化についても是非言及していただければ。

若旦那家康: ということで、僕の読み方で伝わっていましたかね?鉄割アルバトロスケットも良く肌は出していますよね?

戌井昭人: そうですね。肌出して汗出して唾出して。今回の公演は本当に面白かったです。今回が初見だったんですけど、オパンポンって書いてあるしチラシが裸だからずっと今回の最後のシーンのようなことが1時間50分ぐらい続くと思ってたんで。

野村有志: 地獄やないかい、それは。

戌井昭人: その先入観をもって見始めたんですけど、アメリカの短編小説のような物語がすごくきれいで面白いなって。破綻しているんだけど、収まっている訳でもない。とても見入ってしまいました。

若旦那家康: 戌井さんは小説家もされていて、芥川賞の最終候補まで残った方で。

野村有志: そんな方がほめてくださったんですか!みんなどんどんツイートしていいよ。

戌井昭人: カート・ヴォネガットっていうんだけど、そんな感じがしたかな。アメリカ限定な感じで言っているけど、本当にそんな感じ。ジメーっとしたところがないし、軽やかな感じがするし。

若旦那家康: さきほどウォーリーさんからのメッセージにあったように質問させていただきたいんですけど、作家だけではなかったり、演出家だけではなかったり、俳優だけではなかったり、いろんなパフォーマンスもちろん演劇に関わらず様々なことをされていますけど、役割を自分の中で使い分けられたりはしていますか?

野村有志: 僕は何か一つでもモノになったらいいというか、これを生業として生きていきたいので一個だけを追求することもそうですけど、ぜんぶわかっていてどれか一つがひっかかったらいいなという感じで、全力でやっています。大谷翔平みたいになったらなって。ピッチャーの4番で監督が出来る高校生みたいな。

若旦那家康: 演劇をしていくってことに全部をしていけばどれかが当たるだろうってことですかね。戌井さんはどうですか?

戌井昭人: 演劇の方は、一緒にやっているのが素人というか役者っていう人がいないのでまつりのオッサンの寄り合いのような感じで。もう途中でね、これで儲けたりすることは諦めたんですね。そうしたら結構楽になった。

野村有志: わかります。そのくらいの意気込みでないとつづけたいって気持ちがね。今回のコロナでもそうでしたけど一回止まった後にもう一回走り出すのって、地面にケツをつけている状態から走り出すようなもんですからね。せめてクラウチングスタートの状態ぐらいは持っておきたいなって。

若旦那家康: 戌井さんも続けていたいって気持ちは?

戌井昭人: 僕もそうですね。続けたいって気持ちはあります。

若旦那家康: 続けてきた先輩がいるから僕たちも頑張れるというか。そういうのはありますからね。今回の公演はちょうど来週から東京公演がほぼ完売しているんですけど、東京でもちょくちょく活動はされているんですか?

野村有志: オパンポンはたまにツアーを一緒に組んでもらってやっています。一人ユニットなのでなかなかこういう機会、今回のKAVC FLAG COMPANYに選んでいただいたりアゴラさんにやらしてもらえたり、いけそうな時を狙わないと、自分で劇場を借りてすべてをってなると難しいですよね。

若旦那家康: 東京でもどういう評価になるのかなってことは気にはなるんですけど。東京から来られた方がこういう作品を見られてどうでしたか?

戌井昭人: いい意味で乾いている感じだし、場所は関係ないと思うけどね。2つ目の『てんびんぼう』 はどういう話になっていくのかなって。みんなかき混ざっていくって感じで、おもしろかったですね。

野村有志: 今回は物語を考えず、一つの事柄について物語にならずに書ければいいのになって思っても筋を追ってしまうのでああいう形にはなってしまうんですけど。

戌井昭人: 一つ目の『サンセット』で踊りだすところ。そこから始まったなって感じで、ここからこれが一時間続くのかなって思い始めたときに話になっていったときにおっ!って。

若旦那家康: 今回は作品が三つあって、書かれた年が違っていて、3つ目の『bikeshed』は新作だったわけですけど。短編を連ねていく仕組みが僕は面白いなって思っているんですが、鉄割アルバトロスケットさんもつながっているとかではなくものすごく短い作品をバーッと繋いでいくスタイルのものを発表されていたんで。今回の長さについてはどう思われましたか?

戌井昭人: ちょうどいいです。俺らも短くて、練習ができるのがみんな来なかったりするんで。それでできるのが2・3分とかだったりするので、5分が限度みたいな。今回のは長さも短さも感じず、素晴らしかったと思います。

若旦那家康: さっき素人の寄り合いって言われてたんですけど、結構名優が揃われている。

戌井昭人: 本格的に役者をやっているわけではない。数あるうちに一つというか。

若旦那家康: 本格的な俳優とやられることは?

戌井昭人: 自分が書いたものでやることはあるんですけど、最初は戸惑いますね。戸惑うっていうか何言ってるか分からなくなっちゃったな。

(2021年2月27日(土)17:00公演)
※本公演は短編3作品のオムニバス形式で上演。

戌井昭人(いぬい・あきと)
1971年、東京生まれ。文学座を経てパフォーマンス集団「鉄割アルバトロスケット」を旗揚げし、脚本を担当、出演もしている。
2009年『まずいスープ』で作家デビュー(表題作は芥川賞候補に)
2014年「すっぽん心中」で川端康成文学賞、
2016年『のろい男 俳優・亀岡拓次』で野間文芸新人賞を受賞(このシリーズの前作『俳優・亀岡拓次』は安田顕主演で映画化された)。
著書はほかに『ぴんぞろ』『ひっ』『ゼンマイ』『壷の中にはなにもない』などがある。