津上みゆき
miyuki tsugami



profile
1973年生まれ
京都造形芸術大学 大学院 芸術研究科

---------個展歴---------
1996 キャラリー白/大阪
1997 ギャラリー白/大阪
1998 ギャラリー白/大阪
1998 ギャラリー2001/神戸
1999 キュービック・ギャラリー/大阪
1999 ギャラリー山口/東京

-------グループ展歴-------
1994 「Coo-key」ギャラリーすずき/京都
1995 「Mi-Co-Si」ギャラリー楽/京都
1995 「'95日本海美術展」富山県立近代美術館/富山
1996 「現代日本絵画展」宇部市民センター/山口
1996 「コレクター展」ギャラリーすずき/京都
1997 「Chaos」CAVE/Brooklyn/N.Y/U.S.A
1997 「第6回奨学生美術展」佐藤美術館/東京
1998 「PAINTING」キュービック・ギャラリー/大阪
1998 「絵画の本領」(テキスト 尾崎信一郎) ギャラリー白/大阪
1998 「CCD-あるいは眼球としての身体」(テキスト 山本淳夫) ギャラリーココ/京都
1998 「カレンダー原画展」すどう美術館/東京
1999 「第3回『若き作家たちからのメッセージ'99』展」すどう美術館/東京
1999 「Compact Disc」 V.A. 神戸アートビレッジセンター/神戸

-------その他の活動-------
1996 第7回柏市文化フォーラム104大賞展 一建畠晢の眼(TAMON賞)
     大賞(買上賞・ニューヨーク研修6カ月) 柏市民ギャラリー/千葉


works
タイトル:「View」
制作年:1999

comment
「この寺にきて八十年が過ぎるが、この松は何も変わらない。」
呟きながら尼さんは杖を付いてゆっくり歩き始めた。
「せっかく来られたのでしたら、千年の歴史のあるこのお池にお顔を映されてから、お帰りになるのもいいものですよ。」
由緒あるこの庭の話の最後にそういって、小さく笑った。
あいにくその日は曇っていた。しかしその瞬間、快晴の境地になった。
池の周りをぐるっと回って、年老いたその方は数人のお付き添いと一緒に寺の奥へと向かった。いつも通 る道なのであろう。私には非日常的なこの場所も、ここにたずさわる人には見慣れた景色なのだ。この庭から見る本堂の趣も近しい佇まいなんだろうか。
寺や庭を訪ねると、必ず何かしら歴史の一部分に出会う。冊子を読んだり説明を聴いたりしながら、さらに理解していく。今を生きる私は、文化財として残され保存されている過去の遺物を、私感の美意識や現在の感覚を織り混ぜて眺める。そして古人の面 影を感じるのも束の間、秋の変わりゆく葉の色に魅せられて、静かで居心地のよい環境に、時を忘れて安らいでいくのだ。
しかし池に顔を映す行為が、ただ私が顔を映してみたいそれだけではなかったとは。この淀んだ水の器はずっとここに鎮座している。黙ってはいるが多くの事を記憶しているというのか。私が池を覗き込めば、池も私を見ているようだ。そしてその向こうには千年の時が流れているようである。
個人の記憶は現在との関係において常に生まれ変わる。繰り返し回想される事柄も現在の感情や状況で少しずつ形を変える。そういった意味では、記憶とは現在とともに生きて完璧な形では記録しきれないものなのだ。私の頭にある思い出は私だけの真実で、外から見れば絵空事かもしれない。
今一度池を見る。庭池特有の曲線が、どっしりと重圧で静かな水面を湛えている。濃い緑は空の色。立派な松が覆い被さり深く影を落としている。そこに映った私の像は、大きな流れのなかの小さな点でしかなかった。

(※この略歴、文章はアートアニュアル'99パンフレットに記載されたものです)


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