吉田亜希
aki yoshida



profile
1975年生まれ
岡山出身
大阪芸術大学卒業


---------個展---------
個展 (CUBIC GALLERY)


works
タイトル:(左2点)「風のアーチ

     (右)「雲の裏側」
制作年:1997

comment
 キャンバスの前に立ち、線をひく。何度も何度も繰り返す。やがてそれは面 になり、私はそれをじっと眺めてみる。そこに生まれた形や空間に刺激され、次の動きは決まってゆく。一人きりで静かに繰り返す単純な行為。それは日常のガチャガチャした時間から、ふっと抜け出すことのできる時間。キャンバスに近づいては離れ、腕を動かし、見て、感じて、思いを巡らせる。私はここにあるという確信。私は生きているという実感。 何を描くかというよりも描くという行為そのもの。描くことはそのまま表現になる。それはつまりバランスを取るということ。例えば、図でも地でもなく、その二つはどちらでもあるという曖昧だけど確かな位 置。絵具と絵具が重なる所の近くもあり遠いその距離。安心感を求めつつ、危険とのちょうど境目のあたりを目指す。弱いからこそある、しなやかな強さ。そんな対立するものの微妙なバランス。私自身について、また作品の中にも。
 絵を描くということ。それは何よりも自分に向けて。絵を描くという行為は、私の中のバランスを取ること。
 物や情報は欲しいだけ。特に不自由は感じず、ガラスや鉄に守られて、豊かで快適で安全なそれはそれは幸せな日々。そんな物質的に豊かな生活の中からこそ、この何とも言えない不安な気持ちは心の中に生まれるのだろう。何か足らないものがある。あまりに傾きすぎて、いっぱい無くしてしまった。忘れてしまっているだけなのかもしれない。それは見て見ぬ ふりをすれば誤魔化しながらいけそうなのだけど、やっぱりそれでは嫌なのだ。
 その答えを見つけることはできなくても、今私に必要なのはそれを探すこと、求めようとすること、感じたいと思う、そういう方向に気持ちを向けること。
 私にとって絵を描くということは、そこに向かうための足掛かりであり、ずばりそのものなのだ。

(※この略歴、文章はアートアニュアル'97パンフレットに記載されたものです)


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